座布団用語集 さ行

先染織物(さきぞめおりもの)

糸を色々な色に染めてから織物に織ったもの。
糸の組織を使って柄を多彩に表現しております。
織ってから無地の布生地に染める後染織物色に比べて、堅牢度(色落ちが少ない。生地が丈夫)が優れております。

刺し子(さしこ)

厚い布を細かく縫い合わせたもの。

刺繍により幾何学模様が描かれている。
布を補強・補修するために行われていた刺し子は、江戸時代に武道の稽古着や火消しの衣装にも採用。
次第に刺繍そのものを楽しむようになり、全国各地で名産品が生まれた。
中でも、現在の青森県地方に伝わる、津軽の「小布(こぎん)」、南部の「菱刺(ひしさし)」、山形県の「庄内刺し子」が有名。

刺し子織り(さしこおり)

刺し子(※別項を参照)風に織られた織物。

経(たて糸)と緯(よこ)糸を交互に編んだ織物を平織(ひらおり)というが、その経糸または緯糸の色を変えることで、刺し子の模様に見えるというもの。
手間のかかる刺し子に代わるものとして広まった。
小物の素材や、武道の稽古着としても好まれている。

座布団カバー(ざぶとんかばー)

座布団が汚れないようにするためのカバー。

本来、座布団はカバーをかけずに使用するが、汚れた際に洗濯が難しく、清潔な状態を保ちにくいことから、近年カバーをかけることの方が増えた。
素材は綿製のものが主流で、夏座布団用に麻や藺で出来たものもある。
座布団は正方形ではなく縦が少し長くなっているため、カバーをかける際は縦横の向きを間違えないようにすること。

座布団返し(ざぶとんがえし)

寄席の高座などで、次に同じ座布団を使う演者のために、座布団の表裏を返すこと。
演技が終わり、舞台そでに戻る前に返される。太古叩き・紙めくりと同様、弟子や前座の演者が行う場合もある。
寄席でのみ許される行為で、礼儀作法では座布団を返すことはタブーとされている。

座布団の舞(ざぶとんのまい)

大相撲で横綱が格下の力士に負けた際、観客が投げる座布団のこと。

金星をあげた力士を祝って行われる。座布団の舞が登場したのは明治時代。
それまでひいきの力士に対し投げられていた祝儀が、初代・両国国技館への移転を機に禁じられたことによる。
祝儀の意味が薄れた現在では、むしろ横綱への不満をぶつける形で投げられることも多く、危険防止のため座布団を投げる行為は禁じられている。

座布猫(ざぶねこ)

座布団の上から動こうとしない人のこと。

一度、座布団の上に座るとなかなか離れようとしない猫にたとえた言葉。主に関西地方で使われる。
ちなみに招き猫の下に敷いた座布団や、ペットの猫用に作られた座布団は「猫座布団」。

鮫小紋(さめこもん)

鮫肌のように細かな点で表現されたあられ模様の小紋。

黒・黒茶・茶色の地に、白・灰色などの淡い色が散りばめられている。
小紋の歴史は古く、室町時代に武士の衣服に用いられていた。
江戸時代に庶民にも広まると、いかに細かい小紋であるかを競う風潮が生まれ、中には点描をあまりに細かくしすぎたため、無地にさえ見える鮫小紋もあった。

傘寿座布団(さんじゅざぶとん)

年祝いで80歳を祝う時に贈られる座布団。

古希・喜寿座布団と同様に主に紫色。
傘の略字「?」が「80」と読めることから、こう呼ばれるようになった。
80歳を「中寿」と呼び、60歳を「下寿」、100歳を「上寿」とする場合もある。

仕立て(したて)

布地を裁断し、縫い合わせて何かを作ること。

裁縫。または裁縫の技術や出来具合のこと。
「座布団を仕立てる」「仕立ての良い座布団」といった表現をする。

しじら織(しじらおり)

徳島県地方に伝わる綿織物。

徳島の旧名から阿波しじら織とも呼ばれる。
太い糸と細い糸を使って織ることで、布地に不規則な張力が生まれ、それが味のある凹凸になる。
表面が縮んでいる様子から、縮織(ちぢみおり)とも呼ばれる。
肌触りが良く、涼しいことから夏の普段着の生地として愛用された。
徳島では、特産の藍で染めたしじら織が主流。
徳島県指定の無形文化財でもある。

JIS規格(じすきかく)

日本工業規格。「Japan Industrial Standard」の略。

工業製品の規格を標準化するため、昭和24(1949)年に工業標準化法によって制定された。
認定は経済産業省が行う。
座布団のサイズの場合、Sサイズが51×55cm、Mが55×59 cm、Lが59×63cmと定まっており、それぞれ木綿判、銘仙判、八端判に相当する。

茵(しとね)

座布団の原型となった敷物。

古代から平安時代にかけて貴族が使用していた。
中国語で「敷く」という意味があり、畳や莚(むしろ)、座具などの上に敷いて使った。
正方形または長方形で、周囲は「額」と呼ばれる4~5寸ほどの華麗な布で縁取られている。
茵の中には、藺の莚、真綿、毛織物などが入っていたが、現在の座布団のようなクッション性はなく、厚みもなかった。

縞(しま)

経(たて)糸と緯(よこ)糸に2種類以上の色糸を使用して織る、縞模様の織物。


縦縞・横縞・格子縞・斜め縞など、種類は豊富で、洋物のストライプ柄やチェック柄のようにカラフルなものも多い。
日本には古くから「筋織り(しずおり)」「倭文織り(しづおり)」などがあったが、江戸時代に入り、これらもすべて「縞」と呼ばれるようになった。
同音の「島」「嶋」と表記することもある。

締め糸(しめいと)

座布団の中綿がずれないようにするために、座布団の中央と四隅に通す糸。

中央の綴じ糸の形は関東と関西では異なり、関東では「×(かける)」または「+(プラス)」、関西では「人(ひと)」または「Y(ワイ)」となる。
四隅の締め糸は、飾り房となっているものが多いが、中央の締め糸は房でない場合もある。
座布団の表を示すために、中央に房を付けたものもある。綴じ糸とも言う。

ジャカード織(じゃかーどおり)

ジャカード織機と呼ばれる自動織機で織られた織物。

フランスのJ・ジャカールが1801年に開催されたパリ産業博覧会に出展。
複雑な模様も自由自在に織れる織機として、急速に広まっていった。
当時のジャカード織は、機械に無数の穴が開いた紋紙「パンチカード」をセットすることで模様を作っていたが、現代はデータ化された「電子ジャカード」を使用。
小物から衣類まで、幅広い布製品に使用されている。

祝寿座布団(しゅくじゅざぶとん)

長寿祝いに使用する座布団で、「還暦座布団」「古希座布団」「喜寿座布団」「傘寿座布団」「米寿座布団」などがある。
中綿を厚くし、座り心地を良くしている。
※それぞれの座布団の詳細は別項を参照のこと

正絹(しょうけん)

他の繊維を混ぜていない、絹だけで作られた糸や織物。純絹(じゅんけん)・本絹(ほんけん)ともいう。
近年、人工絹を作る技術が発達したため、正絹と人工絹の見分けが難しくなっている。
ちなみに正絹の場合、糸を燃やすと髪の毛の燃える臭いがする。

寝具製作技能士(しんぐせいさくぎのうしん)

厚生労働省が認定する技術資格のうち、寝具製作に特化したもの。

技能の高さによって1級・2級に区分される。
敷き布団・掛け布団・座ぶとん・子供用布団・夏掛け布団・こたつ布団・ かいまき(夜着)・肌掛けふとんの知識が問われる。
試験には学科と実技があり、都道府県知事が実施。1級ではかいまき(中夜着)を、2級では掛け布団を製作(ミシン縫い)する。
近年、伝統産業の振興に役立つ技術として注目されている。

角綴じ(すみとじ)

座布団の中綿がずれないようにするために、四隅を綴じ糸で留めること。
綴じた糸は房になっている場合が多い。
角の先端に房を付ける方法と、角の先端を箱型にして房を付ける方法とがある。

角出し(すみだし)

座布団づくりの工程の一つで、座布団に中綿を入れる際、四隅の角に綿を詰めること。
座布団を作る作業の中で最も難しい工程で、職人の腕の善し悪しが出る箇所とも言われている。

青海波(せいかいは)

波形をモチーフとした文様。
雅楽の名曲「青海波」がその名の由来で、舞人たちが波が描かれた装束を身にまとっていたことから、こう呼ばれるようになった。
色どりどりの半円を重ねたもの、浮世絵風の波を描いたもの、菊を波に見立てたもの(菊青海波)、鹿の子で波を表現したもの(鹿の子青海波)などがある。

正座(正坐)(せいざ)

足を崩さないで姿勢を正して座ること。

「跪坐」「端坐」とも呼ばれ、元々は家臣が主君に対してかしこまった姿勢を指していた。
畳の上で長時間正座を続けることは苦痛を伴うため、そのために座布団が普及したと言われている。
座布団が正確な正方形ではなく、やや縦方向に長い長方形をしているのも正座をするためで、足先を座布団の端に合わせるようにして座ると足がしびれにくい。

製綿所(せいめんじょ)

製綿機により、木綿から綿を作る施設。

綿の打ち直しなども行う。
最近は布団などの綿製品を販売する小売店を兼ねている場合も多い。
布団や座布団、綿入れなどを家庭で仕立てていた頃は「わた屋」と呼ばれ、一般客にも綿を販売していた。

関取座布団(せきとりざぶとん)

幕内力士が土俵を待つ間に使用する座布団。

控え座布団とも呼ばれる。
通常の座布団より大きく、中綿も豊富に詰められている。
中央には四股名が書かれおり、力士へのプレゼントとしても人気が高い。
芸能人などにも贈られる。

卒寿座布団(そつじゅざぶとん)

年祝いで90歳を祝う時に贈られる座布団。

古希・喜寿・傘寿座布団と同様に主に紫色。
黄や金の地を用いることもある。
(※黄・金は米寿と同様)「卒」の略字「卆」が九十と読めることが名前の由来。
贈呈用では厚みがあるものが好まれる。